「となり町戦争」 三崎亜記

となり町戦争

となり町戦争

となり町との戦争が始まる。「僕」は広報でそのことを知った。戦争が始まっても何も変わらない日常。公共事業として事務的に遂行される戦争。広報の片隅で計上されていく戦死者数。そんなとき「僕」のもとに役所から偵察業務の任命が届く。

無気力な主人公と、その主人公の住む町というローカル舞台。ここまでならどこでもある現代小説。ここに私たちにとって、テレビの向こう=世界の向こうでの出来事である戦争を結びつけたことにこの作品の面白さがあるね。

当事者になってもリアリティを感じられない、間接的にしか、自分のスコープからしか触れられないセカイ。

世界・社会のアイロニカルなデフォルメで、「語られやすさ」を多分に含んだこの「となり町戦争」という構造を考え付いた時点でこの作品は勝ってるなぁ。学校の授業とかで使われそう。

「僕」は最後に戦争による唯一の痛みを感じるんだけど、その痛みがあれじゃ皮肉効かせすぎだよ!リアリティとは自分の感知できる範囲の中で起こる出来事ということ。