「100回泣くこと」中村航

100回泣くこと

100回泣くこと

「交際3年。求婚済み。年の差なし。ここが世界の頂点だと思っていた。こんな生活がずっと続くんだと思っていた―。」(帯より)
言い回しとか、小道具の使い方とか、会話とか、いちいちうまいなぁ。それらがストーリーに豊かな意味と生き生きとした生活世界を展開してる。筋書きを骨組みに例えるなら、そういったひとつひとつがほどよい肉付きを与えてる。
でも、後半の展開はこの著者としてはちょっと意外だった。
使い古されたストーリーのテンプレートをなぞっただけの純愛、純粋な話の小説が最近多い。新しい感覚や光景を何も提供しない物語たち。そういったガリガリの骨だけの小説に対するアンチテーゼなのかもね。アンチテーゼって言いたいだけ。